日本ワインの産地それぞれの特徴をご紹介!

日本ワインの産地

ここ数年、人気が高まってきている日本ワイン。

ブドウの栽培や醸造技術の向上、生産者たちの努力によって国内外で高い評価を獲得し、日本ワインを提供する飲食店や販売店も増えてきています。

また、2018年の10月30日に新ワイン法が施行されてから、国産ブドウを100%使用して国内で製造したワインのみが「日本ワイン」と呼べるようになったことで、ますます日本ワインのブランド価値が上がり、世間の注目を集めています。

日本ワインの主な産地は4か所

北は北海道から南は九州まで、日本全国で製造されている日本ワインは、海外ワインと比べて生産地域のイメージが湧きやすく、日本人にとって親しみやすいことも人気の要因のひとつ。「函館のワインが飲みたい!」「これは長野のスキー場近くのワイナリーのワインだね」など、自分が興味のある地域に絞ってワインを選ぶことも、楽しみのひとつです。

国税庁のデータによると2017年3月時点における日本のワイナリーの数は、全部で283場。このページでは、そのうち約6割のシェアを占める4大主要産地(北海道、山形県、長野県、山梨県)それぞれの特徴をご紹介いたします。

北海道、山形県、長野県、山梨県のワイナリー数一覧

都道府県 ワイナリー数
山梨 81
北海道 34
長野 34
山形 14

山梨の特徴

~日本ワイン発祥の地~

ワイナリー数

全国1位

日本ワインの生産量

全国1位 5510kl、全体の33%の生産量 (2017年3月現在)

地域の特徴

日本ワイン発祥の地で、日本ワイン生産量とワイナリー数、ブドウ栽培量も1位の山梨県。広大な甲府盆地は、晴天の日が多く昼夜の寒暖差が大きく、ブドウの栽培に適しています。

山梨県では2008年から、11月3日を甲州とマスカットベーリーAで作られたワインの解禁日として「山梨ヌーボー」と命名し、毎年この日から新酒を発売しています。

歴史

明治3年に、外国人から聞いた知識や書物の情報をもとに二人の青年が甲府でワイン作りを始めたことが、日本ワインの始まりと言われています。その後フランスから技術を持ち帰った人たちが勝沼に日本初のワイン会社を設立し(現メルシャンの前身)、ワイン作りが本格的にスタートしました。

2015年7月に「地理的表示 GI Yamanashi」が国税庁から認可されました。100%山梨産の指定品種のみを使用し、県内で醸造し制限内の方法で製造したものに、厳しい審査と官能検査を行い、価値の高いワインとして海外でも評価されてきています。

主なブドウ品種

甲州は、日本の固有品種として2010年に国際ブドウワイン機構でワイン醸造用ブドウとして登録され、海外から注目されることになりました。2013年には、赤ワイン用品種のマスカットベーリーAも登録されました。

白ワイン用

甲州、シャルドネなど

赤ワイン用

マスカットベーリーA、カベルネソーヴィニヨン、メルローなど

主なワイナリー

・サントリー登美の丘ワイナリー…広大な自家ぶどう畑を所有。見学ツアーも充実のワイナリー
・マンズワイン…キッコーマンのワインブランド。勝沼ワイナリーと小諸ワイナリーを持つ
など

北海道の特徴

~欧州系ブドウ品種の主要産地~

ワイナリー数

全国2位

日本ワインの生産量

全国3位。2495kl、全体の15%の生産量(2017年3月現在)

地域の特徴

夏場でも湿度が低く昼夜の寒暖差が大きいブドウ栽培に適した気候。ヨーロッパ系ワイン専用種の主要産地にもなっています。

新設ワイナリーの増加率が最も高く、2010年には17だったワイナリーが2017年には34と、この7年で倍の数に増えています。老舗のワイナリーがある十勝や余市エリアに加え、空知エリア、函館や富良野、奥尻島にまで、ワイナリーが広がっています。

歴史

北海道では、明治8年に北海道開拓使庁がブドウ栽培を開始、明治10年に醸造を始めるなど、国内でも早い時期からワイン作りを行っていました。

主なブドウ品種

白ワイン用

ナイアガラ、デラウエア、ポートランドのほか、ケルナー、ミュラー・トゥルガウなど、ヨーロッパの冷涼エリアの品種も生産されています。

赤ワイン用

キャンベルアーリー、ツヴァイゲルト、山ブドウを交配した清見や山幸など。近年はピノ・ノワールも栽培され、そのワインは高い評価を得ています。

主なワイナリー

・北海道ワイン…国産ぶどうを100%使用した日本ワインの生産量が日本一
・十勝ワイン…日本で最初の自治体直営ワイナリー
など

長野の特徴

~シャルドネ生産量 全国1位~

ワイナリー数

全国2位

日本ワインの生産量

全国2位 3720kl、全体の22%の生産量(2017年3月現在)

地域の特徴

ブドウ栽培に適した気候と地形で、日本ワイン生産量とブドウ生産量ともに全国2位を誇る長野県。良質なブドウが持つ力を引き出すようなワイン作りをしているメーカーがたくさん存在します。

歴史

長野県では明治時代中期にブドウ栽培と醸造が始まり、1930年代にかけてサントリーやメルシャンなどの大手がこの地でワイナリーを開設しました。

2002年に「長野県原産地呼称管理制度」を導入、「信州ワインバレー構想」を策定し「NAGANO WINE」としてブランド化しています。エリアは、日本アルプスワインバレー(松本市、安曇野市)、千曲川ワインバレー(東御市ほか県北東部)、桔梗ケ原ワインバレー(塩尻市)、天竜川ワインバレー(県南部)の4つに分かれています。

主なブドウ品種

シャルドネは国内で一番の生産量を誇り、高山村のものはブランドになりつつあります。

白ワイン用

ナイアガラ、竜眼、シャルドネ、ソーヴィニヨンブランなど

赤ワイン用

コンコード、巨峰、ブラッククイーン、メルローなど

主なワイナリー

・シャトー・メルシャン…長い歴史を持った「日本ワインの原点」ともいえるブランド
・井筒ワイン…無添加ワインの製造にいち早く取り組む
など

山形の特徴

~ワイナリー数/日本ワイン生産量 全国4位~

ワイナリー数

全国4位

日本ワインの生産量

全国4位 1200kl、全体の7%の生産量(2017年3月現在)

地域の特徴

さくらんぼやラ・フランスなど果物の産地として有名で、ブドウ生産量は全国3位。南陽市や上山市など、内陸部にワイナリーが集まっています。県内産ブドウ100%で作られ品質基準検査に合格したワインを「山形県産認証ワイン」として、多くの優良ワインを産出しています。

歴史

山形県南陽市で江戸時代初期にブドウ栽培が始まり、江戸時代後期には旧朝日村で地元民や修験者たちが野生のブドウを発酵させて飲む風習があったと言われています。

明治24年に醸造を開始し、第二次世界大戦の様々な影響を受けた山形のワイン作りは、昭和の後期から県の技術センターの指導、ブドウ生産者やワイナリーの努力で、飛躍的に品質が向上していきました。

主なブドウ品種

山ブドウとカベルネソーヴィニヨンを交配したヤマソービニヨンなども使われ、県内産のブドウで個性豊かなワインを作り出しています。

白ワイン用

デラウェア、シャルドネなど

赤ワイン用

マスカットベーリーA、メルローなど

主なワイナリー

・朝日町ワイン…2016年伊勢志摩サミットでワインを提供
・高畠ワイナリー…スパークリングとロゼで国産ワインコンクール金賞受賞
など

その他の地域

・東北地方…岩手県にも多くのワイナリーがあり、冷涼な気候に合ったブドウを中心にしたワインが作られています。

・新潟県…日本ワインの父・川上善兵衛の作った岩の原葡萄園や、新しいワイナリーも多くできて、海岸近くの砂地を利用して、ヨーロッパ系の品種の栽培を積極的に行っています。

・東京都…都心に醸造所をもつ都市型のワイナリーが注目されています。

・関西地方…複数のワイナリーが集い関西ワイナリー協会を発足させ、品質の向上に努めています。

・中国四国地方…観光資源開発型のワイナリーが多くあります。

・九州…温暖な地域でありながら、生産者の努力でヨーロッパ系ブドウのワインなども生産し、高い評価を得ています。また、焼酎メーカー資本のワイナリーが多くあります。

この記事のライター:山本エリ
フリーライター/フードコーディネイター。オーガニックレストランの運営に関わり、日本ワインと自然派ワインに出会う。お酒と食をこよなく愛し、農業も含む様々な活動をしている。